2018年3月1日(木)放映のテレビ東京の番組「主治医が見つかる診療所」で、脳卒中について特集していました。脳卒中が起きてしまった時の「生死を分けるポイント」などについて、実際の症例をもとに紹介していました。
目次
脳卒中とは
脳内の血管がなんらかの原因により「詰まる・破れる」ことにより脳の組織への血流が止まり脳組織に障害を起こすことを言います。血管の「詰まり」の場合は「脳梗塞」。血管の破れによる場合は「脳出血」です。両者は現象としては異なりますが、結果として脳細胞が損傷される点では共通しています。障害の場所や程度などにより、半身麻痺、言語障害、意識障害などの症状があります。
番組前半は、DJ KOOの脳動脈瘤の手術の模様と、その後の食生活などを紹介していました。DJ KOOの脳動脈瘤は、危険水域である7mmを超えて1cm近くの大きさになっていて、いつ動脈瘤が破裂して出血してもおかしくない状態でした。
脳卒中で生死が分れるポイントとは
そして番組後半では、医学関係者自身が体験した脳卒中の症例を3つ紹介していました。この中で、「生死を分けたポイント」を分析しており、とても参考になりました。
症例1:医師(男性):1か月前に手の震えが
53歳の時に脳梗塞を発症。医師だけあって、発症時に冷静に自分の症状を観察できています。
前兆として、発症1か月前ぐらいに、手が震えるなどの異常が起きていました。その時は心配はしたものの、とりあえず様子をみることにし、特に対応はとりませんでした。
発症時の状況ですが、突然、首の頸動脈のあたりを何かがムクムクと頭の方へ流れていくのを感じたそうです。
そのあとの経過はつぎのとおりです。
- ものすごい眩暈がした。地球が大回転するような感覚。
- あわててテーブルにつかまったが、右半身がだんだんマヒしていくのを感じた。すぐに脳の血管に異常事態が起きたとわかった。
- しかし突然症状が軽くなったので、大急ぎで同僚の医師に自分に起きた異常を告げ、救急対応(手術)をした。命は助かったが左脳に障害が残り言葉を失った。(左脳は言語・論理的な思考をつかさどる)
- 手術後、リハビリとしてベッドの上で好きな歌を唄ったりした。言語がNGでも歌は唄えることができたのは、残った右脳が芸術や感覚を司るからで、歌詞を話し言葉としてではなく、「言葉の塊り」として処理できたからではないかと分析。さらに右脳を刺激続けることで左脳が回復し言葉も甦っていった。
生死を分けたポイント
一瞬症状が軽くなった時に、様子をみることはせず、直ちに同僚に症状を伝えて対応をしたことで障害が軽く済んだことにあります。
症例2:看護師(女性):口笛が吹けなくなった
42歳の時に脳出血発症。医療関係者だったので対応が早くて比較的軽症で済んでいます。
前兆として、日ごろから頭痛が続いていたそうです。それと身体が妙に重かったとのこと。
発症時の状況ですが、仕事が終わって自宅で家事をしている時に、突然、身体に異常を感じたそうです。何か変だと思い、鏡で顏を見てみたら、顔がゆがんでいたそうです。具体的には顔の右側にゆがみがあり、顎がだらんと下がっていたそうです。それを見て、咄嗟に思いついて試しに口笛を吹こうとしたが、できなかったそうです。なぜ口笛かというと、義理の父親も昔同じ症状になったそうですが、義父も医療関係者で、口笛を吹けるかどうかで脳の異常かを判断していたことを思い出しそうです。
それですぐに119番し対応をしたことで軽い症状で済んだとのこと。しかしやはり言語障害が残りました。職場復帰後、義父のアドバイスで病院の受付を志願したそうです。来院者の対応をすることで会話機会を多くし、5年後頃にほぼ完全回復したそうです。
生死を分けたポイント
脳などの異常が発生した際に現れる症状や、普段できていたことが突然できなくなるということを認識していたことで、異常に気付くのが早く対応も早くできたことです。
症例3:医師(男性):執念で携帯にたどり着いた
46歳の時に脳出血発症。医師だけに、発症時に脳の血管が切れたことを悟り、すぐに対応したことで比較的軽く済みました。単身赴任だったために周りに誰もおらず、通常であれば非常に危険な状況でした。
発症時の状況は、トイレで出そうと思って息張った瞬間に、突然頭をバットで殴られたような痛みを感じたそうです。今まで経験したことがないような痛みです。すると右手がマヒし始めました。まず指が動かなくなっていき、次第にマヒが右半身全体に広がっていくのを感じたそうです。そして身体全体が動かなくなっていき、意識が遠のきながらも何とか這いつくばってトイレから出て、携帯までたどり着きました。
生死を分けたポイント
脳出血の勝負の分かれ目が3時間以内の手当ということを知っていましたので、執念でトイレから出て、携帯電で119番できたことが生死を分けました。
家族が発症した時の対応
万が一家族に脳卒中が起きてしまった時に、どうすればよいかを解説していました。
<ポイント1>
どんな体勢で寝かせるのがよいか
→ 障害が起きた方の側を上にして ”横向き” に寝かせる
<ポイント2>
寝かせる時の顔の向きはどうするか
→ 顔を下向きにする(吐しゃ物が喉をふさがないようにするため)
脳の異常の前兆を発見する方法
脳に深刻な異常が起きる「前兆」をとらえる方法がいくつかあります。これらにあてはまる時は検査をした方がいいかもしれません。場合によっては急を要するケースがあります。
<バレーアームサイン>
- 手の平を上に向けて、両腕を前方に水平に伸ばす。
- 目を閉じた状態で10秒数える。
- 10秒後でも腕が水平の状態で、手のひらが上向きをキープできていればOK。
- 脳に異常があると、両腕が共に水平でいられずどちらかが下がってしまったり、手のひらが上状態をキープできず横向きになったりする。
<左右の口角を上げる>
- 鏡に向かい、口を「イー」の形にして口角を上げる。
- その際、左右の口角の上がりに差が出ていないかを確認する。
- 左右の上がり具合が均等でない場合は、脳に異常がある可能性がある。
<ロレツがちゃんと回るか>
- 「らりるれろ」とスムーズに言えるか。
- 突然ロレツが回らなくなる場合は、深刻な状態に陥っている可能性があるので、至急病院に行くことをお奨めします。
キーワード「FAST」
脳卒中が起きてしまったときに助かるためのキーワード「FAST」について。
FASTは以下の頭文字です。これを覚えていればいざという時に役立ちます。
F:Face → 顔が歪んでいないか、顔つきが変わっていないか
A:Arm → 腕が思い通りに動かせるかどうか
S:Speak → 会話ができるかどうか
T:Time → 時間との闘い。対応が早いか遅いかが生死の分れるポイント
まとめ
- 脳卒中は脳内の血管が詰まったり破れたりすることで起きる脳組織の障害
- 脳卒中の生死の分かれ目は、いかに対応を早くできるかによる
- 様子をみようとせず、すぐに救急にかかること
- 脳卒中で起きる顔や身体の変化について普段から認識しておく
- キーワード「FAST」について理解しておく
- 家族が脳卒中で倒れた時の寝かせ方を確認しておく
- 脳の異常を簡単に発見できる方法がある