ときどき、有名人が膵臓がんで亡くなってテレビや新聞等で報道されることがあります。膵臓がんは自覚症状が出にくく、判明した時点では手遅れになることが多いと聞きます。しかも膵臓がん患者は年々増加しているとのこと。そういう怖いイメージのある膵臓がん、早期に発見できれば治療が可能なようですが…。
膵臓とはどんな臓器
(出典:筒井よしほさんによるイラストから)
そもそも膵臓とはどんな臓器なのでしょう。
どうやら膵臓は胃の裏側あたりに、他の臓器に隠れるように存在していて、15~20cmほどの長さの比較的薄い臓器のようです。胃、十二指腸、脾臓などに接しています。
膵臓の主な働きは2つあります。
まず一つ目は、食べたものの消化を助ける膵液を作る機能です。
二つ目はインシュリンやグルカゴンなど血糖を調節するホルモンを作る機能です。
消化と血糖調節に関係している臓器のようですね。
膵臓がんの原因は
実は、膵臓がんの原因についてはまだよくわかっていないようです。ピロリ菌と胃がんのように明確な因子というものがないというのも実情です。それでもある程度は危険因子というものがわかってきたようです。
① 喫煙
喫煙は膵臓がんに限らずあらゆるがんの危険因子ですが、吸う人は吸わない人に比べて膵臓がん発症率が2倍になると言われています。
② 家族歴
両親や兄弟に膵臓がんが発症した場合、自身の膵臓がん発症率は2〜3倍になると言われています。また、同じように家族に膵炎の病歴がある場合も、通常よりも発症率が高いようです。
③ 慢性膵炎
慢性膵炎の人は膵臓がんの発症率が高くなります。その中でも遺伝性膵炎を有する人はさらに高リスクになります。
④ 糖尿病
5年以上糖尿病である人は膵臓がんが発生する可能性が高くなっています。逆に、特に不摂生をしたなどの覚えもないのに急に糖尿病になった場合などは、膵臓がんの初期症状である可能性があります。これに関しては後述します。
⑤ 食事
赤身肉やハムやソーセージなどの加工肉は膵臓がん発症リスクが高まると言われています。逆に、果物や野菜は膵臓がんの発症リスクを低下させると言われています。
⑤ 肥満
肥満の人は、正常体重の人に比べて発症リスクが2割ほど高くなります。特に、腹部の脂肪が多い人は要注意です。
発見しにくいのはなぜ
前段で述べたとおり、やはり膵臓がんは発見しにくいことで手遅れになりやすいようです。その理由のひとつは、初期においては自覚症状がほとんどないこと、また、他の部位や臓器へ転移しやすいという性質があるというものです。さらに胃の裏側にあることで見えにくい位置にあることも発見が遅れやすい要因になっています。
がん検査と言えば、CT、MRI、PETなどですが、これら最新の検査装置でも見つけることが難しい癌と言えます。
しかし、そんな膵臓がんでも早期発見できれば治療ができるようで、そのあたりは他の癌の場合と同じです。
でも、発見しにくいのに早期発見ってできるのでしょうか…。
「ある特徴」を見逃さない
実は、膵臓がんになると、比較的早い段階で「ある特徴」が現れるらしいのです。その特徴を見逃さないのが重要となります。
① 急な血糖値の上昇
最近急に血糖値が上昇した、しかも思い当たるような理由がない、などという場合は要注意です。というのも、血糖値を下げる働きをするインシュリンは膵臓で作られますが、膵臓がんができるとその働きが悪くなってしまい、その結果、血糖値が上昇するからなのです。暴飲暴食をした覚えがない、糖尿病の家族歴がないなど、心当たりもないのに血糖値が上昇するような場合、膵臓がんを疑ってみるがべきです。
② 主膵管が太い・膵嚢胞がある
もうひとつが、エコー検査で見つかる「ある特徴」です。
そのひとつが「主膵管が太い(拡張している)」という特徴です。「主膵管」とは、膵臓で作られた膵液を通す管ですが、この管が拡張している人は「膵臓がんになりやすい」、もしくは「膵臓がんが発生している可能性がある」ということがわかってきました。
実は、膵臓がんは主膵管から発生することが多いそうなのですが、がんの発生により主膵管が詰まりやすくなってしまうことから主膵管内の圧力が高まり主膵管が拡張するというわけです。このように主膵管の拡張は膵がんの重要なサインのひとつになります。
また、「膵嚢胞」があるかどうかも膵臓がんのサインと言われています。この嚢胞とは、内部に液体がたまった袋のようなものと考えてよいかと思います。
最近の研究では、主膵管の径が2.5mm以上に拡張している場合は、そうでない人と比べて膵臓がんの危険度が6.4倍、5mmの膵嚢胞がある人は6.2倍、両方がある場合は27.5倍とする報告もされていています。
「主膵管拡張」や「膵嚢胞」を指摘された人は、定期的に検査を受けるなど、注視していく必要があります。
マメな検査が重要
膵臓がんの組織そのものを早期に発見することは難しいとしても、早期でも現れる「ある特徴」を見逃さないことです。早期発見でき適切な対応を図ればたとえ膵臓がんと言えども完治が可能になります。人間ドックや検診を定期的に受診し、血糖値の急激な上昇や「主膵管拡張」や「膵嚢胞」を見逃さないよう心掛けることが鍵になります。